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社会

私たち、急に病気になっても大丈夫?
2003/12/07                     佐藤美里菜(11歳)

今年の5月頃に、夜中に小さな男の子がおなかが痛くて救急病院にかけつけたが、医師の対応がおくれたため、その男の子が亡くなってしまった事件があった。 その事件から、「男の子は病院に行ったのに、なぜ死んでしまったのか」という疑問がわいてきた。そこから、私達チルドレンズ・エクスプレス記者は、小児救急について調べようと思った。
 10月8日、平山恵子クリニックにて、取材を行った。平山恵子先生は、事件が起きた原因を「小児科は、医療が難しくて、小児科医になる人が少ないんです。だから徹夜で仕事をする事が多くなります。そうすると、医師が疲れてしまい、あんな事件になってしまったんじゃないでしょうか」といっていた。
 11月30日に東京都児童館(渋谷区)でおこなった街頭取材では、21人の母親のうち大半は「二度とあんな事件は起こってほしくない」と言っていた。「病院の電話番号をかきとめていますか?」という記者の質問に対して、ほぼ全員が「はい」と答えたが、小児救急医療に対しては不安がある事が分かった。
 12月6日に東邦大学医学部第一小児科科学教室、松裏裕行先生に取材をした。開業医の平山先生は「小児科医は減っている」と言っていたが、救急病院の松裏先生は、全体的には「減っていない」といった。記者が厚生省の統計を調べてみると、医師の数は増えていても、小児科医の数は他の医師と比べて増加の割合が少ないことがわかった。
 松裏先生は「でも、高齢化しているために、体力に自信がなくなって、救急医療をやめてしまう医師が多い」といっていた。一方先生は、医療を受ける側に「昼間に病院に行くと混んでいて待ち時間が長いから、わざわざ夜間に来る人がたまにいるんです。それから、タクシー代がもったいないから、救急車を呼ぶ人もいるんです」といっていた。病院にたいしての不安もあるが、病院を利用する私達にも問題がある事が分かった。
 この問題は、医師や病院だけの問題ではなく、マスコミの報道の仕方、そして、私達にも関係あることだ。この問題を病院や医師、そして患者である私達とで解決しないかぎり、小児救急医療を受ける私達子どもの不安はいつまでも残る。



●報道されている小児科、実際の小児科  近藤侑希(10歳)

 五月頃、夜中にお腹が痛いという症状がでたため、救急病院に駆けつけたところ、医師の対応が遅れたために、亡くなってしまった。そんな事件が新聞一面に大きく取り上げられていた。
 それを見た私達チルドレンズ・エクスプレス記者は小児救急医療について興味を持ち、小児科の医師に話を聞いてみることにした。
 はじめに、第一次救急の病院で働いている平山恵子医師に取材した。平山さんは、最初、産婦人科の病院で働いていて、出産等子どもに関する事も学ばないといけなくなってきたため、知識をつけていき、そして最終的に小児の病院を開きたいという意志が込み上げてきて、今は小児科で働いている、という。平山さんは、自分の病院で助けられなくて、他の大きな病院に運ぶとき、なぜ、自分は助けられなかったんだ、と感じるそうだ。だから、できる事は全てやろうと思っていると話す。夜間に来る小児も多数いるらしく、疲れている夜でも、できる事はやる、と考えているそうだ。「この間の事件は対応が遅れてしまったのかもしれないね。でも、新聞の報道だけで、とんでもない医者だと判断するのはいけないと思います」。
 その次に、子供をもっているお母さん、お父さんの話を聞きたくなったため、東京都児童館で街頭取材を行った。この取材の目的は、医師の対応が遅れてしまった事件をどのように受け止めているのか、という事を知るためだ。
 小児科にお世話になっている子供を持つお父さんお母さんは、あの事件については、「不安」、「悲しい」と感じているそうだ。そして、もし子供が病気になった時にどうしよう、と不安を抱いている様子だった。そこで、私達は、病院側にやってほしい事を聞いてみた。すると、ほとんどの人が、「対応をしっかりきちんとやってほしい」と発言していた。
 病院側に意見をいうだけでなく、お父さん、お母さんは、自分でできる事はやっているのか、気になったので続けて聞いてみた。「いつも行く病院の電話番号は書きとめています」という声が多くあがった。それなりに子供が病気になった時にどうするか、という事を考えているように思えた。
 そんなお父さんお母さんの声を伝えるため、第三次救急の東邦大学医学部第一小児科教室で働いている松裏裕行先生に取材に行った。松裏先生は、五月の事件について、「ご家族は勿論のこと、事件に関係した全ての人にとってもとても悲しい不幸な出来事です。小児救急の仕事は大変ですが、皆で協力してこのような事件をなくすよう努力しなければいけないと思います」と話す。どうして大変なのかと問うと「近所の病院に行けばよい軽い症状でも、すぐ救急病院に来る患者さんが多いから、救急病院に来る患者の数はとても多いんだよ」と語っていた。なんと、救急車はただだから、わざわざよんで、救急病院に来る患者さんもいるという。それから、救急車にのって来ると、すぐ診てもらえるから、乗ってくる人もいるそうだ。松裏先生は、「そういう自分勝手はやめてほしい」と話していた。
 それから、街頭取材の話もしてみた。「不安」、「悲しい」と感じている人がいる、という話には、こう答えた。「そうじゃなくてできる事から皆もやっていって、一人でも多くの患者さんが助かるように協力してほしい」。これから病院の医師として解決していきたい問題は、という質問には、「小児科医が努力するのは当然ですが、子供達の親御さんも政治家も皆で協力して解決する努力をしたい。それに加えて、小児科医を増やすように大学病院としても努力したい」と話していた。
 取材を終えて、小児科の問題は難しい、とあらためて実感した。五月の事件だって、新聞に報道されている事が全てではなくて、もっと別の情報があるはずだ。私達は、お母さんお父さんも文句をいうだけではなく、病院と協力して良い病院をつくりあげていく事、そして皆が病院の現状を知って、他人事のように考えないで自分のこととしてこの問題を考えてほしいと感じた。