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社会

「10代の“気軽にダイエット”が危ない」
2003/09/15                       河村 光(13歳)

みなさんは10代の子供たちが抱える、悩みやストレスが原因の命にかかわる恐ろしい病気を知っていますか?心のストレスがあるために自然に食べるのを拒否するようになり、しかも、それが長く続いていき体を壊してしまう。これが思春期やせ症、別名拒食症なのだ。まだあまり知られていない、この病気を詳しく知るため、私達は慶應義塾大学病院小児精神科医の渡辺久子先生(55)に話を聞いた。
 いま、軽い気持ちで「ダイエットしよう!!」と言う10代の女の子達が増えてきている。しかし「やり始めると止まらなくなってしまう」のだそうだ。「拒食症は思春期の心身症の中で一番死亡率が高く、一番治りにくい」病気だ。だいたい思春期の女子患者の10%から20%が死亡するという。
 「人は大人の体になるために23歳まで成長し続ける。女性の場合は23歳になって大人の体に仕上がったら、それまで体をつくるために必要だった脂肪などがとれてくるからスリムになるのだ。10代の子供たちがこのスリムな体と自分を比べると、太っているからとダイエットし始める。これが危険への第一歩になる。最初はつらくても、だんだんつらくなくなってくる。これはベータ・エンドルフィンという脳内に麻薬がでてきて、体はスリムになるし、成績はあがるので周囲から誉められ、ダイエットで痩せていくのを快感にしてくれるからだ。
 からだを作っていくためには体の中の25%が脂肪である必要がある。しかし、拒食症患者は体脂肪が5%しかない。だから体のシステムも壊れてしまう。さらに体脂肪が無い分だけ省エネの体になってしまう。脂肪と言うのはその日その日を生きていくたびに燃やしてしまうから、体重が下がるともう細胞が作れない、骨も太くしていく事が出来ない、またいろんな内臓も大きくしていく事が出来なくなるのだ。そして一番恐いのは脳がやられてしまうと言う事である。脳には食欲中枢というのがある。またそこには呼吸中枢もあるし、心臓の中枢、睡眠の中枢もあるとても大事なところなのだ。だから、そこをやられてしまうと長い事この病気から回復できなかったり、回復し損なって過食症になったりする」と先生は説明してくれた。
 この病気になる人たちはほとんどがみんなこまやかで、真面目で言われたとおりにしたりする人たちだと言う。不思議な事に、小さいときから親の言う事をよく聞いて、普通の子が出来ないくらいお利口さんだった子がなるのだ。また親の愛情を受けた記憶の無い子に多い。このように過度のストレスがたまって、それが引き金になって拒食症になるケースが多いそうだ。
 私も私の友だちも一回は、「あ?。太ってきたぁ!」と言ったことがあった。でも、このときはまだ拒食症の事をあまりよく知らなかった。私は拒食症のことを詳しく知れて良かったと思う。自分でも自己管理がちゃんと出来るし、もし自分の近くに本気で「ダイエットしよう!」と思っている人がいたら、その危険を教えてあげることができるからだ。
 「今の世の中は痩せていればいいと言う風になってきている。また雑誌でもダイエットの広告などを載せたりしている。今、イギリスでは『ダイエットの事を10代の雑誌に載せると罰金』と言う法律がある。だから私達医者は日本でもこのような病気が起こさないよう法律改正をしてほしいと要望している」と渡辺先生は締めくくった。
 法律も大切だけれど、私達自身でこの恐ろしい病気から守る方法を先生はアドバイスしてくださった。「いつも自分のことを真剣に思っていてくれる家族や友人が周囲にいて、その人たちと何でも話せる環境を作ることが大切です」。

取材チーム:河村光(13)、花岡絵美(15)