チルドレンズ・エクスプレス記者紹介記者を募集しています寄付にご協力くださいリンク
チルドレンズ・エクスプレス
HOME記事カテゴリー「社会」>記事を読む

 

社会

2001年の記事からの抜粋<

●犯罪といじめ

映画「バトル・ロワイアル」:R-15指定めぐる論議
(東京支局 2001年3月)朝日新聞の「きょういく」に掲載

◆子どもの意見も反映させて

封切りから1月半。R-15指定(十五歳未満入場禁止)をめぐり物議を醸した映画「バトル・ロワイアル」は観客動員数が約百八十万人となりヒットを続けている。中学生同士が殺し合うこの映画をどうして作ったのか。子どもが取材したニュースを大人のメディアに対して発信する国際的な通信社「チルドレンズ・エクスプレス」の記者が、深作欣二監督(70)に聞いてみた。

■戦争知らない子に見せたい

映画の設定は近未来の日本。生きることの厳しさを教えようと、中学三年の生徒を無人島に駆り集め、戦わせるバトル・ロワイアル法が制定され、殺し合いが始まった。「これはたった五十五年ほど前の日本、そして僕が経験してきたこと」と監督は話す。当時中学三年だった監督は、戦争で米軍の進攻を受け、否応なく彼らと戦う周りの人たちを見ていた。「ほとんど死んじゃうだろう。それでも日本を守らなければいけない」と軍艦に体当たりして命を落とした人々。深作少年は、死体を集めて焼き、遺骨にする手伝いをしていた。 

至る所、街は空襲で焼け払われ、崩壊した日本。後一年戦争が続いていたら監督自身、兵隊になっていただろうと話す。「君たちくらいの年の若者にとっては、おとぎ話に聞こえるかもしれないけれど、これは実話だ。自分の経験から生きること、死ぬことの重みを描き、危険を知らずに生きている今の中学三年にこそ見せたかった」

■金もうけの映画、と議員

十五歳未満の入場を制限する取り決めをしたのは、業界が自主的に映画の内容を審査する映倫管理委員会(映倫)。その理由は「教師を刃物で殺傷する場面など暴力描写が多い」からだ。

映画を実際に見た高校生の記者は戦争と関係があるとは思わなかったけど、別に暴力シーンが問題だとも考えなかった。どうして国会議員は問題だと言っているんだろう。民主党の石井紘基衆院議員に聞いた。

石井議員は、子どもの血や肉が飛び散る残虐な殺しのシーンは、青少年の心理に非常に強い影響を及ぼすだけと話す。ここ数年、犯罪を起こした青少年の多くが、映画やビデオの影響を受けたと裁判などで証言していることから分かるという。

石井議員は続けた。「別に映画を見た子どもたちが悪いことをするという前提で言っているわけじゃないが、性や暴力は特に刺激が強い。それに、殺したり血が飛んだりしなければ命の大切さが分からないというのは情けないでしょう?」

「今は金もうけのためにはどんな映画を作ってもいいようになっている。表現の自由もあるし、警察とか政治が取りしまる前に、自主的に国民の社会のモラルを反映した機関が自主的にやった方がいい」と石井議員は主張する。民主党や自民党は今、有害情報を規制する法律を作る準備を進めている。

■映画の規制にも子どもの声を

子どもにだって情報を取捨選択する権利がある。国がするべきなのは犯罪が起こらないようにすることで、情報自体から止めるのはおかしいと私たちは思う。生きている年数が少なくて精神的にも未熟だから、現実とバトル・ロワイアルという仮想を混同するのではないかって大人が考えるのは問題だよ。

刃物で首が切られてぶあーっと血が出るシーン。これを見たからといって、それだけですぐに中学生がまねするような可能性はないと思う。「犯罪に走る子は、家庭や学校とか他に要因があるんじゃないかな。そういうことが重なって、映画が犯罪のきっかけになることはあるかもしれないけど」とは実際に映画を見た高校生の記者。

今回取材したのは十三歳から十七歳までの七人の記者。私たちは十五歳とは大人と子どもの間を両足かけてまたいでいる微妙な年齢だと思う。

入場制限の判断を映倫だけに任せず、映画をよく見る十歳代や二十歳代の人に先行的に見せて、十五歳未満の子どもにとって有害かどうかの声を集めるのはどうかしら。あるいは、子どもが悪影響を受けるかどうかを精神科医などの専門家に尋ねるのも一案だと思う。

なぜ、十五歳未満には見せられないのか。勝手に子どもたちをイメージで決めていないかな。子どもたちを信じてほしい。子どもの意見だけで判断すると、偏ってしまうかもしれないけれど、大人だけの判断も偏ってしまう。大人と子どもがまず話し合いをすることから始めるのがいいと思っている。