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HOME記事カテゴリー「国際」>2009年12月デンマーク、コペンハーゲン市、COP15現地ルポ

 

国際

「Let us in!」私たちも決議の場に!
                                     三崎 友衣奈(18)   

 国連気候変動枠組条約第15回会議(COP15)では、目的とされていた法的拘束力のある温室効果ガス削減目標の同意は難しい。このような懸念は、会議が開幕した12月7日以前からもたれていた。しかし、これほどの事態を誰が予想しただろうか。
会議では先進国と途上国との交渉は決裂に近い状態で、17〜18日にかけて各国の首脳がコペンハーゲンにそろうまで、最悪な結果を誰もが想定してしまうような状況だった。そして、会場であるベラセンターの外もやはり混乱していた。

  長い長い列 COP最終週の始まりである12月14日、ベラセンター前には入場許可証の登録を待つ人が長蛇の列をつくった。その列は隣の駅まで続いていた。NGOやメディアの人々である。私たちもそのグループの中の一つで、朝9時から並んでいた。だが、列はなかなか進まない。雪のちらつく中で、国連からのアナウンスは昼ごろの「登録手続きの機械の故障のため一時間に15人しか入場できない」と、夕方前の「入場者が大変多く、会場内の人が出ないとこれ以上人を入れられない」という報告だけだった。この時点で収容人数1万5千人のセンターに1万7人が入っていた。
「Let us in!」、「Shame on UN!」、「Explanation!」とNGOやメディアの人々が声をそろえて叫びだしたのは、その報告のしばらく後だった。会場内からぞくぞくと人が出てきたにも関わらず、外で待っている人々は一向に中に入れなかったためだ。複数の警官がガードしているフェンスに向かって、人々は強く訴えかけた。
「What do you want? ――― Entrance!」「When do you want it? ――― Now!」。 そして、本来はNGOの人々とは別枠であるはずのメディアは、ようやくNGOの列と別に列が設けられ、しばらくたってから入場することができたようだった。  

バリゲート 国連が待ちくたびれたNGOの人々にようやくはっきりとした説明をしたのは、17時30分になってからだった。「本日はもう人は入れられない。明日の朝8時にここで並べば登録手続きを開始する」。大ブーイングが起こるも、少なくとも午前7時頃から並んだ人々は入れることはできなかった。
 翌15日、私たちが午前7時にベラセンター駅を降りた時にはすでに多くの人が集まってきていた。ところが、ここにきても国連のアナウンスは矛盾していた。「Secondary Card」と呼ばれ、COP第二週目の入場制限のためのパスを持っていない人は入れないというのである。このパスは第一週目の「バッチ(登録証)」を持っている人しかもらえず、前日に登録できなかった私たちはバッチを持っていないという理由で会場内に入るのをあきらめざるを得なくなった。
結局、NGOの中でSecondary Cardを入手して会場に入ることができたのは世界的に名が知れていて実績のある大きな組織だけだった。その組織ですら入場する人の数を制限され、水曜日からはNGO関係者は一切入ることができなかった。これは異例の事態である。COPの常連という経団連の女性は「バリ会議のときもケニアでもこんな不都合はなかった」と不満気だった。
困っていたのはNGOだけではない。30年間環境問題を追い続けてきた韓国の新聞記者Cho Hong Sup氏やベルギーからのテレビ局のカメラクルーなど各国のメディアも8時間以上並ばされるという事態に驚いていた。
国連の不手際もさることながら、これほど予想をはるかに上回る人が駆けつけたCOPも今までなかっただろう。注目度の高さは重要性を示す。あれほど多くの人々が世界の国・地域からコペンハーゲンへ来て、強くCOP15の現場にいることを願望する様子は、まさしく世界の人々の環境問題への危機感を表しているように見えた。
今回、多くのNGOの人々が会場にすら入ることができなかったのは大変残念だった。これらの人々の熱い意思も決議に取り入れられるべきである。

Let us in !!!
                                富沢 咲天(14)

鶏の着ぐるみでアピールする人達 16日の午前9時、私たちはコペンハーゲンのホテルから地下鉄に乗り、ベラセンター 駅で降りた。電車を降りた瞬間から、私の額にちくちく冷たい風邪が当たるのを感じた。
 そこにはもう会場に入るパスをもらうための長蛇の列ができていた。
3時間過ぎたお昼の時点で、足のつま先がじんじんと痛くなってきた。それでも周りの人たちは懸命に待ち続けた。ある女性は疲れたためか、凍りついた大理石のような地面に座り込んでいた。
 私たちの後ろに並んでいた経団連(経済団体連合会)の女性は、「私は毎年COPに来ているけど、こんなに待たされるのは初めてだわ!バリでもこんなに待たなかったし、ケニアでさえ1時間で入れたのに!!」と文句を言っていた。周りの人たちも、寒いなか長時間待たされてだんだん不機嫌になってきた。

 5時間経過した午後2時の時点で、警官がメガホンを片手に持ちながら叫んだ。「機械の故障のため、1時間に15人しか入れない。フェンスの中にいる人は3時間、フェンスの外側にいる人はあと6時間かかる。」と言われた。私たちはフェンスの外側にいて、もう絶望的だった。しかし、今日パスをもらわないと、明日も入れない。はるばる日本からCOP15のために来たのだからなんとしても中に入りたい。その強い意志で、もうしばらく並ぶことにした。  そんな中、ある団体が無料でコーヒーを配っていた。風力発電で沸かしたお湯で作られたコーヒーだという。寒くて疲れていたせいもあるが、温かく香ばしいそのコーヒーは普通の喫茶店などで販売しているコーヒーよりはるかに美味しく感じた。 また、長時間待っている人たちのために、サンドイッチを配っていたNGO団体もいた。この団体は、「C02の排出量の40%は畜産業が占めており、1ヘクタールあたり牛を育てて食べるより、作物の方がより多くの人が食べることができる」というデータをもとに、「ベジタリアンになろう!」と鶏の着ぐるみを着てアピールしていた。 さすがCOP会場の周辺だけあって、いろいろな団体がそれぞれの手法で温暖化防止を訴えている。

ベラセンター入口 7時間が経ったころ、会場からチラシが回ってきた。そこには「長い間お待たせして申し訳ありません。会場は収容人数を超えて大変混雑しております。中の人たちが出てくるまで、お待ち下さい。」と書いてあった。これを読んだ人たちは皆激怒した。なぜなら、会場内にいた人たちは続々と出て行っているのに長蛇の列が全然進まないからだ。人々は「Let Us In!」などと叫び始めた。 私たちが並んでいる間に、6人の韓国人メディアグループに会った。彼らも私たちのように何時間も待たされていた。「メディアでさえ入れないなんておかしい!」とかなり怒っていた。大きなテレビカメラをかついでいる人がちらほらいたのは、NGOだけでなく、メディアも入れなかったのだ。

 8時間経ったころ、NGOとメディアに分けられた。そしてメディアは少しずつ中へ入っていった。しかし、NGO側は何も動かない。前に進んだ!と思ったら、みんなが横に広がっただけだったり、前の人との間隔が段々狭くなっていた。最終的には、東京の朝の電車の通勤ラッシュ並みにぎゅうぎゅうになった。そして、人々は「Shame On UN !」などと叫び始めた。
結局、入場は午後6時で締め切ると言われ、私たちは5時半に泣く泣く引き上げた。

 これはある意味象徴的な出来事だったと思う。COPの主催者側はこれほど今回の会議に多くのNGOが来るとは予想していなかった。しかしCOP15は京都議定書の次の枠組みを決める大事な会議だ。地球の未来を決める会議になるかもしれない。だから世界中の人々は真剣に温暖化のことを考え、そして自分たちの声を各国の政府の代表に伝えようとこの会場に集結した。結局会場に入るパスは手に入らなかったけれど、何千人もの人たちの温暖化防止に対する熱意を目の当たりにしたことで、私はなんだか頼もしい気持ちになった。

60 Earth Hour Copenhagen
                                飯沼茉莉子(13)

 私たちは今回、COP15の会場であるべラセンターの入場制限により入る事が出来なかった。しかし、ベラセンターだけではなく他の場所でも数多くの環境問題に関するサイドイベントが開催されていた。その中で私たちが注目したのは、WWF(世界自然保護基金)が主催している「60 Earth Hour Copenhagen」だ。このイベントはエネルギーの消費を抑えることを目的として、子ども達が手作りのランタンを作り、それを持ってパレードし、同時に街中の電気をいっせいに60分間消すというものだ。そこで私たちはイベントに参加している大人や子どもとその保護者、ボランティア・スタッフにも取材をした。
女性スタッフのAnnevette Nielsen(25)さんは、子ども達に気候変動について怖がらせずに楽しい方法で伝えることができてとてもうれしいという。また子ども達には、自分たちの未来だからこの問題についてもっと真剣に考えてほしいと語った。
デンマークからだけではなく、バルト三国の一つであるエストニアからはるばるやって来た子どもがいた。良いイベントがあると聞き、ぜひ参加したいと思ったLomas Kama(12)君である。彼は、気候変動について深く理解をしていた。ドキュメンタリー番組で動物が絶滅したり、氷が溶けていくのを見た時に気候変動はとても怖いと感じたそうだ。彼は、このイベントはとても興味深いので、もっとたくさんの子ども達に参加してほしいと訴えてくれた。

 コペンハーゲン市内から孫を連れてやってきたFiallandさんは、地球温暖化は私たちの孫にはとても重要な問題なので、子ども達が喜びそうなこのイベントに連れてきたという。Fiallandさんは日頃から孫達に地球温暖化によって氷が溶けて海面上昇が起きたり、動物がどうなってしまうかを教えているそうだ。孫たちはまだ小さいから全てを理解する事は難しいけれど、学校でも教わっているから少しは分かっていると思うと語った。

中国出身のDAN SCHOOさんとYE GAOさん 最後に、現在コペンハーゲンに住んでいるが、中国出身のDAN SCHOOさんとYE GAOさんに話しを聞いた。二人はランタン作りと同じ会場のプラネタリウムで行われるコンサートを見るために来たという。彼らは気候変動は怖くないそうだ。なぜなら、世界ではCOP15などの大きな会議が開かれていて彼らはそれを信用しているからと言う。またこういう会議が行われる事によって地球が変わっていくとポジティブに考えているから、気候変動は全く怖くないのだと言う。街中の電気を60分間消すことについて聞いてみると、デンマークは冬にあまり太陽が出なく陽に当たる事が少ないため、憂鬱になる人も多いので真冬ではなく夏にこのようなイベントを行った方がいいと言う。そして自分たちは、環境に一番悪い車を持っていないかわりに、4台の自転車を持っているそうだ。

 私たちもランタンを作った。そして午後6時から各自がそれをもって市庁舎前の広場に向かってパレードをした。街中を歩いてみて、そこに暮らしている子どもや大人の意見を直接聞く事ができてとても良い機会となった。直接的に環境問題に取り組んでいる人と間接的に取り組んでいる人の差はあるけれども、みな環境問題への意識を持って生活している事がよくわかった。   

ランタンパレード
                           富沢 咲天(14)

 16日の午後7時から8時の間、コペンハーゲンの町の光が消えた。みんなで一斉に電気を消してCO2削減をする「60Earth Hour Copenhagen」というイベントだ。 私たちはWWFインターナショナルとWWFデンマークが協力して行う、子供を対象としたランタンパレードに参加してみた。
イベント会場のプラネタリウムに入ると、天井や壁にぶらさげられたたくさんの紙のランタンが目に飛び込んできた。世界中から約1万個送られたみんなの手作りランタンを飾っているのだそうだ。いろんな色や模様があってとてもにぎやかだ。
最初に話を聞いたのはWWFのパンダのロゴが入っているTシャツを着た若い女性。とても忙しそうだったが、「1、2分なら」とインタビューに応じてくれた。彼女はWWFの職員Anneve Nielsinさんで25歳。「このイベントは楽しく子供たちに環境のことを分かってもらえるいい機会よ。参加できて嬉しいわ」とにこやかに話した。子供たちに期待していることはと聞くと「地球温暖化は今の子供たちの将来のことなので、きちんとこの問題を受け止めて欲しい。」と真剣なまなざしで言った。

 テレビの取材を受けている男の子を見つけた。彼はこのイベントに参加するためにエストニアから来たそうだ。名前はLomas Kama君、12歳。「ドキュメンタリー映画などで動物が死んじゃったり、氷が溶けるのをみて地球温暖化は怖いと思った。だからぼくは家で温暖化防止のために、リユースなどささいなことからCO2を削減しているんだ。このイベントはとても興味深くていいから、もっと子供たちが参加するべきだよ」と彼はランタン用の青の画用紙をはさみで切りながら話してくれた。まだ12歳なのにとてもしっかりしていたので感心した。Lomas君のランタンには海に住んでいる生き物たちがたくさん描かれていた。
会場にはランタン作りのほかWWFのシンボルのパンダの着ぐるみがいたり、パンダのフェイスペインティングをしてくれたり、お菓子が用意されたりと、大勢の子供たちが楽しめるよう工夫されていた。
そんな中で会ったのは小さな孫たちを連れたおばあちゃん。孫たちは英語がまだしゃべれないということでおばあちゃんに色々と話を聞いた。「孫に地球温暖化を分かってもらうために来たのよ。こういうイベントは子供たちにとっても楽しいしね。この子たちはまだなんとなくしか理解していないと思うけど、きっとそのうち分かるはずよ」と優しい口調で語ってくれた。
ちょっと変わった意見の人にも出会った。彼の名はDan Schooさん。中国から来てコペンハーゲンで勉強をしている留学生だ。今回はイベントに有名な歌手が来ると聞き、彼女と二人で来たらしい。私が地球温暖化についてどう思うかを聞いたところ、「地球温暖化は怖くないよ。だって今政府が地球温暖化防止のためにCOP15とかをやっているじゃないか。僕はそれに期待して前向きに生きていきたいよ。あと、このイベントは6ヶ月前にもあったけど、冬にやるべきじゃないね。冬のコペンハーゲンはすぐに暗くなって、電気を消すと気分も暗くなって人々がゆううつになっちゃうかもしれないからね」と自信たっぷりの笑顔で言った。真剣に地球の将来を心配する子供もいれば、楽観的に考える大人もいる。温暖化に対する意識はさまざまだ。

レストランも消灯   午後7時をまわった頃、ランタンパレードがスタートした。私たちも取材の合間に作った自分のランタンを持ち、コペンハーゲン市内を行進した。紙のランタンの中は子供たちが持っても危なくないように、折ると光る蛍光棒みたいなものが入っている。明かりがついたランタンを手にみんなとてもうれしそうだ。パレードの列はチボリ公園を抜けて市庁舎広場へ。どんどん人数が増えていく。ぐんと冷え込むデンマークの夜を、年齢を問わず生後数ヶ月の赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで大勢の人たちが歩いた。こんなにたくさんのごく普通の人たちが、温暖化防止を静かにアピールしている。

 市内ではこのイベントに参加したお店や建物などがライトダウンしていた。レストランでは、電気の代わりにキャンドルでお客さんたちが食事をしている。パレードの後で私たちも電気を消したお店で夕食を食べたのだが、キャンドルの灯りのもとで食べた料理は温かみがありおいしく感じられた。
世界中から送られてきたランタンのように、地球上のみんなが温暖化防止という同じ目標に向かって歩いているように感じられた夜だった。

スタートとしてのCOP15
                              三崎友衣奈(18)

  「持続可能な未来へのシナリオをつくる」。11月23日、チルドレンズ・エクスプレスの取材にそう語った福山哲郎外務副大臣。京都議定書の次の新しい議定書を決めるCOP15で日本の、そして世界の環境問題に関する「シナリオ」はどうなるのか。会議終盤の12月17日、コペンハーゲン市内のImperial Hotelで福山氏に聞いた。 まず福山氏は、日本の姿勢として京都議定書の単純延長を望んでいないことを強く主張した。「京都議定書の延長だけでは日本として認められない」。温室効果ガスの主要排出国アメリカ・中国が批准していないのでは、京都議定書の次の枠組みを決めるというCOP15としての目的が達成されない。

 しかし会議では、中国を代表とする新興国・途上国の猛烈な反対が続いていた。日本の掲げる「主要国の合意の上での温室効果ガス25%削減」は難しいのではないか。合意がない場合、日本の今後の環境問題対策はどうなるのだろうか。福山氏は「25%の目標はもちろん続ける」とした上で、「けれど、まだ各国の合意という段階にもなっていない」と会議がいかに混乱していたかを語った。
 混乱の原因は、発展途上国と先進国の言い分の違いにある。現在の温暖化の責任を先進国に問う途上国と、新興国である中国・インドの経済優先の姿勢を懸念する先進国とで完全に交渉が固まっている。「途上国の拒否度が大きく、とにかく会議を動かそうとしている」という状態だった。

 取材当日の午後4時には鳩山首相が到着する予定で、18日にかけて各国の首脳がコペンハーゲンに集う。それでも会議は「首脳たちに何を決めてもらうか決まっていない状態」だったそうだが、福山氏は「最後の最後までがんばるしかない」と力強く言い残した。
 会議は混乱を極め、ようやく決まったのは最終日の18日に非公式で行われた会合による米・中・ブラジル・インド・南アフリカの合意だった。会議に参加できなかった発展途上国から非難されたものの、デンマークの議長ラスムセン氏がこれに留意するという形でコペンハーゲン協定が成立した。内容は世界全体で気温上昇を摂氏2度で抑えることや、先進国には来月末までの自主的な温室効果ガス削減目標登録と発展途上国への支援、発展途上国には国の温室効果ガス排出量の透明化などで、各国の参加は自主的となった。
 この結果は、福山氏の17日時点での「見通しは正直分からない」という発言からすると最悪の事態は防ぐことができた、と受け止められる。しかし、現在も進行している気候変動による災害の危機に直面している国・地域の不安を考えると、これで満足してはいられない。
 米中の枠組み参加は来年11月のCOP16に向けての第一歩である。COP16では気候変動の被害を受けている、または受けるであろう国・地域の人々の焦りを認識した決議により重点を置くべきではないだろうか。国の経済成長の妨げとなる法的拘束の回避ばかりを気にしていては、協定は結べても合意には至れない。未来へのシナリオはまだ始まったばかりである。   

自転車の町コペンハーゲン
                               飯沼茉莉子(13)

 今回私たちがコペンハーゲンの街中を歩いていて感じたのが、驚くほど自転車に乗っている人が多いのに、日本のように自転車に気を使いながら歩くということが全くなかったことだ。ほとんどの道路では自転車専用のレーンが整備され、たくさんの人が通勤などに使っていた。なぜここまで自転車が普及したのだろうか。

 市庁舎前広場で開催されていた、サイドイベントに参加していたブースの一つで、「Track」というバイクショップの店員Tau Kallehaveさんに理由を聞いてみた。「コペンハーゲンは平地で山と呼べるような地域がないので、自転車が走りやすい環境が整っているからだ」と教えてくれた。
 日本とは違って自転車の形がとてもユニークだ。歩いていて一番多く見かけたのが、自転車の前に2人の子どもが乗れるほどのかごがついているものだ。他には、自転車の後ろに大きな荷物が乗せられるような台のついたものもあった。どの人も、自動車の代わりに、日常的に自転車を利用していた。

  途上国のように自動車が購入できないから自転車を利用しているのではなく、環境のことを考えて利用している人が多いのである。そして、デンマークという国が恵まれた土地であり、国が自転車レーンの整備をどんどん進めていくため、利便性からも自転車の普及率は高くなっている。
 日本は国土が狭く、山や坂道が多いのでデンマークのように自転車が普及することは難しい。しかし、性能のよい電動アシスト付きの自転車が手ごろな価格で購入することができるようになれば、もっと多くの人が通勤にも自転車を使えるようになるかもしれない。
自動車から自転車に変える人がもっと増えれば、自動車のレーンを減らして自転車用に代えるなど様々な方法があるのではないか。
 日本もまだまだ工夫次第で、CO2を削減することが出来るという希望が持てた。諦めずに、他の国や出来事に関心を持ち続ければ、必ず道が開けると思う。

Hope+Copenhagen
                               富沢 咲天(14)

 コペンハーゲンの市庁舎広場の中央には巨大な地球儀がある。そこでは「Hopenhagen」というイベントが開催していた。周りにはたくさんのブースが並んでおり、それぞれで環境に関係する取り組みを紹介している。さっそくHopeにあふれた取り組みを取材した。
 最初に入ったブースには、タイヤがとても細い自転車が2台飾られていた。「これが僕の自転車だよ」と紫の自転車をさしてデンマーク人のTau Kallehaveさんが説明してくれた。 「自転車はコペンハーゲンの人たちにとって、車より早く移動できるしエコだからとても大事なんだ。それにコペンハーゲンは平らな土地だから自転車に最高な場所なんだよ」と嬉しそうに話してくれた。たしかにこの街を歩いていて坂が1つもないのに気がついた。自転車専用道路がちゃんと整備されていて、車を持たなくても生活ができるようになっている。ブースの前にもたくさんの自転車が通り過ぎて行く。クリスチャニアバイクという、子供を乗せる荷台のついた三輪自転車もよく見かけた。ちらちらと雪が降っている寒い氷点下でも子供たちは当然のように自転車の前カゴに乗っていた。日本のお母さんがママチャリで子供を乗せて走るよりずっと安全で、カバーがあるから風雨でも大丈夫だ。

 次に行ったブースは展示室。そこで私が目をとめたのは青と黄色のラインが入っているかわいい電気自動車。前から見るとPOLICEと書いてある。説明を読むと、このパトカーは2012年に開かれるロンドンオリンピックの警備で使われるそうだ。だんだんオリンピックも環境を意識しはじめていて、初めての環境オリンピックと言われているロンドンオリンピックが楽しみだ。
 向かい側のブースでは、とてもおしゃれなクリスマスの雰囲気の看板を見かけた。デンマーク語でなんて書いてあるかはよく分からなかったが、おそらく「Shaneのリサイクルおもちゃ」と書いてあるのだろう。中に入るとまるでおもちゃの国。部屋中がかわいらしい手作りおもちゃでいっぱいだ。そこにいた担当の人の話によると、このおもちゃはすべてShaneさんが作ったものだそうだ。Shaneさんはいらなくなったものを、みんなが喜ぶものに変えてしまうリサイクルの達人のようだ。新しい命をもらった作品はどれもすばらしく、生き生きとしているように見えた。
ブースの外に出ると子供たちが高い声でキャーキャー楽しそうに叫んでいるのが聞こえた。クリスマスシーズンなので人力発電ツリーだ。自転車をこいで発電し、クリスマスツリーのイルミネーションを光らせる仕組みになっている。私たちもさっそくやってみた。氷のように冷たい外でも、ペダルをこいだら体はポカポカ、ツリーはピカピカ。発電にまで自転車が登場するとは、デンマーク人は本当に自転車が好きなのだろう。

  コペンハーゲンに滞在中、この国の人たちの温暖化防止のためのさまざまな取り組みを見聞きした。そして日本で温暖化防止のために、個人で、企業で、社会で何ができるかを取材してきたことを思い出した。デンマークも日本もそれぞれの国が、その国の気候・社会にあったCO2削減に一生懸命取り組んでいる。COP15の会議では残念ながら法的拘束力のある新たな議定書の採択はできなかったが、義務や罰則がなくても世界はCO2削減の努力をこれからも続けるだろう。環境先進国のCO2削減の技術が新興国や途上国にも広がり世界が協力し合えば、Hopearth、きっと地球温暖化は防止できるはずだ。

若者を刺激し、一体感を強めたアクション活動
                         藤原沙来(20)

 COP15には、本会議に参加する各国の政治家とは別に数多くのNGOも参加し、ブース出展やセッションを行った。さらには、多くのアクションが企画され、世界中から集まった活動家や若者が、共に同じアクションを行うことで各国政府にアピールしたり、本会議のより良い進行を促したりしていた。

たとえば、気候変動に向き合おうと呼び掛けるプラカードと共に会場の入り口に黙って立ったり寝たりし、危機感を表わすサイレントアクション。パジャマ姿で寝ているところから起きるという行動を見せて、各国の首脳、リーダーも目を覚ましてほしいという意思を表すアクション。本会議が思うように進まず各国の意見が分かれ始めると、各国首脳の顔写真をお面にし“Climate shame”と書かれた横断幕を掲げるアクション。皆でキャンドルによる文字を作るアクション。

こういったアクションに参加しているのは主に若者だ。私も若者が主体となって行われていたアクションに参加し、そこで出会った若者に、なぜアクションに参加しているのか聞いてみた。

 「気候変動の解決策に楽しく向き合う方法の一つだし、若者が一体となって危機感を表すのには良い方法だと思うから」とオーストラリアから来たLinhは話す。ドイツから来たFrankaは「これだけ多くの若者が一つになって気候変動に向き合う機会はそう多くない。本会議に参加している政治家にも良いアピールになっているはず」と話した。さらに彼女は、「私たちが若者として伝えなくてはいけないことは、少しずつ解決していこうということではなく、今解決するために今すぐ行動を起こさなくてはいけないということ。政治家は次のCOP16があるという前提で話をしているようだが、将来に持ち越すのはおかしい」と話し、合意に至らなかった政治家の姿勢に対しても苦言を呈した。

また、あるNGOスタッフは、アクションについて「自分たちに大きく関わる気候変動問題を主体的に考えて行動することが大事」と言っていた。自分たちの将来をより真剣に考えるために、多くの若者が一体となってアクションに取り組むというのは、政治家だけではなく、参加している若者自身にも良い刺激を与えてくれるものなのかもしれない。

アクション活動は、様々なNGOがCOP開催時に限らず常に行っているので、それに参加することができるほか、自分で考えて行うこともできる。しかし、現実を見てみると、多くの若者はまだまだ気候変動について知らない。まずは気候変動とは何なのかを共有していくアクションを行うことが必要であろう。

国の政策を待つより、私たち自身が解決策を実行しよう
〜COP15に参加する若者の意識とは〜

                         藤原沙来(20)

 国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は、当初、京都議定書に定めのない2013年以降の地球温暖化対策を決定し、各国の同意を求めることが目的であった。しかし、結果は一部の途上国の反発などで全会一致の採択を断念し、“コペンハーゲン協定”を “合意する”ではなく“留意する”との決議採択にとどまった。つまり、今後はこの協定を支持した国だけに効力を持つこととなる。藩基文国連事務総長は「今回の会議が新たな枠組み作りの始まり」と話したそうであるが、具体的な数値目標、政策案などは、来年メキシコで開かれるCOP16に持ち越されることとなった。

 この結果に、若者からは落胆の声が上がった。彼らは、「今回の結果のように政府や各国が協力して改善に向けて積極的に動かないのであれば、私たち若者は地球が滅んで行くのを待っているしかない気がする」「若者として様々な活動をしていても地球に住む全ての人々が同じ危機感を感じて同じゴールを目指していなければ、何も変わらない」と不安な気持ちを語る。

 しかしながら、気候変動とは先延ばしにできるような問題ではない。気候変動がストリートチルドレンなど、生活が不安定な層に大きな影響を与えているのを目の当たりにしているインドネシアから来た学生のLindaとDevi(22歳)は「この世には1つの地球しかない。地球は私たち全ての人間のもの。政治家は単なる政策を決める人に過ぎない。政策を待つのではなく、私たち自身が意識を変えて、簡単なものでもいいから行動を起こさないと、生きることもままならなくなる。私たち自身が気候変動の要因で解決策でもあることを認識しなければいけない」と話した。

「350.org」という環境NGOが主催したキャンドルで文字を作り気候変動を訴えるアクション活動に参加していたCanadian Youth Delegation teamの1人Meagan Mckeen(18)は、「このように若者が必死に気候変動に向き合っている姿を多くの人に見せることや、意見を共有して若者としてできることをやるというのが目的」とCOP15に参加した理由を話した。また「COP15に参加して得た知識や経験、ネットワークを持ち帰って今後の活動に生かすことも大事なこと」と言う。MeaganはCOP14にも参加し、個人レベルでの活動を積極的に行っている。今回の経験を通して「若者としてできることは何か、新たなアイディアを得ることができれば自分のプロジェクトに生かしたい」と意欲的だった。
 British Councilのドイツ気候チャンピオンの一人としてCOP15に参加したFranka Stohling(18)は、ブログやHPを立ち上げ、若者に興味を持ってもらえるような方法で気候変動と向き合っている。「若者ならではの視点でこのCOP15に参加して、同年代に気候変動について伝えたい」と言い、「視覚で若者にアピールするのも大切だと思う。同年代に伝えるためにはどうしたらよいか考えるのも私たちの役目」と強く主張した。
 BBCのディベートに参加していた、アムステルダムの大学に通う中国人のJulie Zheng(20)は、「気候変動に直接関わる活動や勉強はしていないけれど、自分の将来に関わる問題だから、知識を得たり、ネットワークを作ったりしたくてCOP15に来た」と言う。今まで環境問題に関しては活動する機会すらなく、何もしていなかったようだが、NGOに所属して活動する若者や、大学で専門的に気候変動について学んでいる学生に会うことによって危機感が強まり、自分も何かしなくてはいけないと痛感したそうだ。「COP15で得たこの衝撃と知識を友人と共有して、早速エコな生活を始めたいと思う」と話し、COP15に参加していた若者の活動に刺激を受けたようであった。「中国政府は独自の意見を主張し、国際的な合意には至らなそうだが、政治が絡んだ政策に関してはどんなに活動をしたとしても市民の声は通らない。社会環境を変えていきたいのならば、私たちが草の根レベルの活動をしなくてはいけないということを今回示されたような気がする」と言い、意識が大きく変わったようだ。 

 本会議場とは別にセッション会場とされていたKlima Forumで出会ったインドネシアのNGO「Eco-Indonesia」から来たLinda Chalida (22)、 同じくインドネシアから来たGoris Mustaqim(26)はともに、「インドネシアには貧困の問題などがあり、気候変動の影響を受ける人が明らかで、気候変動問題に一人でも多くの人が向き合えるような環境作りがまず必要」と話した。「インドネシアでは、国際的な合意よりも、もっと市民レベルでの話をしないといけない。政治家の結論を待っている間にも市民が主体的に動かなくては」とすでに活動している自分たちの役割を改めて確認する機会となったようだ。
 世界各国から集まった若者は「気候変動は今の問題。だからこそ、今取り組まなくてはいけない」「気候変動は政治家の問題ではない。将来社会を担っていくことになる若者の問題」と語る。互いに意見を共有し、それを同年代に伝える。今すぐに行動をし、社会を少しずつでも良いから変えていく。それが今、気候変動問題と共に生きる若者としての使命でもあるとCOP15の取材で感じた。