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リーダーシップの可能性を考える
2013/10/25                南雲 満友(18)

 リーダーシップって何だろう。 そしてそれを育むリーダーシップ教育とは何だろう。2013年8月1日から8日まで日英記者交流でイギリスを訪問した際に、チルドレンズ・エクスプレスの姉妹団体であるHeadliners(ヘッドライナーズ)の記者とユースワーカーたち14名(ロンドン局7名、ベルファスト局4名、フォイル局3名)、さらに日本の若者34名に取材をした。それを通して見えてきた「リーダーシップ」についてまとめた。

■可能性の引き出し
日本には、「出る杭は打たれる」という諺にもあるように、周りの空気を読むという文化が存在し、「リーダーをやりたい!」と宣言することで周りから浮いているように思われる風潮がある。皆で一緒という意識が強いのだ。そのためか、実際には学校でリーダーシップ教育が行われていないことが多いようだ。日本の若者34人に「リーダーシップ教育を受けたことはあるか」と質問をすると、「ない」という回答が多かった。

これに対し、イギリスではリーダーシップ育成プログラムが盛んで若者たちは自ら進んでリーダーの役割を経験していた。ロンドンデリーにあるフォイル局のキティー(17)は「私はドラマの監督をやった。皆がわかってくれないときに、仲間のやる気を引き出すことが大切だ」と語った。またロンドン局のプレシャス(17)は「バンク・オブ・ユーロのビジネスプログラムでリーダーに選ばれ、公平であることの大変さを学んだ」という。

イギリスで様々なリーダーシップ育成プログラムを実施している団体Changemakersにもロンドンで取材をした。同団体は1994年に教育者らによって設立され、信頼、知識、異端児、愛情、勇気という“5つの価値”をベースとしてリーダーを育成するプログラムを行っている。2泊3日のキャンプやプロジェクト、121のコーチングセッション、スキル育成期間を含む3ヶ月のリーダーシッププログラムがあり、対象年齢は16歳から25歳に絞っているという。スタッフのスラッジ氏は「16歳は個性が発達する時。自分についてわかり始める。だから16歳からを対象にしている」と説明する。また、「リーダーシップは元来自分の中から始まる。潜在能力を引き出し、自分を信じることで発揮できる」と語った。16歳で個性が芽生え、その時期にリーダーシッププログラムを経験することで、リーダーシップについて自分なりの定義を行い、自覚することにつながるのだ。参加した若者には、これらのプログラムを通して、自信、コミュニケーションスキル、影響力、自己動機付け、認識などを学んでほしいという。そして、「リーダーシップスキルは短期間で身に付くが、それをどんな状況でも発揮できるように育むことが大切だ」と話す。リーダーシップを育成する過程では、可能性を気づかせて引き出し、それを維持していくことが大切なのかもしれない。

■グループ学習
 日本との比較でスラッジ氏は授業のやり方の違いをあげた。イギリスやアメリカの学校授業ではグループ学習が多くとられている。それに対し日本は個人学習がほとんどである。フォイル局のグレイス(18)は「グループ学習はやりがいがあるし、自信とリーダーシップを身につけることができる」と話した。

■リーダーはサポーター
 リーダーに必要なスキルについてイギリスと日本の若者たちに聞いたところ、コミュニケーション能力、動機付け、誠実さ、グループを良い方向に導くこと、妥協、統率力という意見が共通して多かった。そしてリーダーときいて想い浮かべる人は女王、首相、生徒会長などがあがった。

そのなかで新たなリーダー像も見えてきた。ベルファスト局のナオミ(18)は「リーダーは皆をサポートする役割がある」と従来のリーダー像である皆を引っ張る人ではなく、支援するというポイントをあげた。Changemakersのスラッジ氏も「リーダーはまず仲間をサポートし、助言を与え、合意を形成していくことが必要だ」と語っている。力で上から指示するようなリーダーではなく、相手の立場にたって考え、コミュニケーションを通して、仲間をやる気にさせる。そして皆をサポートしながら、的確な方向に導いていくリーダーである。

そもそもリーダーシップとはリーダーだけに必要なことなのであろうか。ロンドン局のイスメール(21)は「将来、自分の子どもに何かを教え、育てていくにはリーダーシップが必要なのではないか」と身近なことにリーダーシップの必要性をあげた。またフォイル局のキティー(17)は「グループの中で誰もが色々な方法でリーダーになれる」と話す。これらは「リーダーシップは身近なことから始まる」というChangemakersのスラッジ氏とも重なる。

■リーダーシップの可能性
「リーダーシップはリーダーシップ教育がなくても育つ」とナオミ(18)は語る。学校でのグループ学習やディスカッション、そして友達関係などでもリーダーシップを身につけることができるという。つまりリーダーシップとは日常生活で行っていることに直結しているのだ。スラッジ氏はリーダーシップについて「一生の旅」と笑顔で締めくくった。

私たち若者にとって本当に大切なことは、毎日の生活を自分でリーダーシップを育む機会にしていくことではないだろうか。そして「リーダーシップって何だろう」と考えていくことが、真のリーダーシップ教育なのかもしれない。

 

誰もがリーダーになれる
2013/10/25                飯沼 茉莉子(16)

  「出る抗は打たれる」という諺が日本には昔からある。そのためかリーダーシップをとることを避ける風潮になってしまっていた。チルドレンズ・エクスプレス(CE)が日本の若者34名にアンケートをとったところ、学校やそれ以外でリーダーシップ教育を受けた学生はわずかだった。しかし、最近の日本では、リーダーシップの重要性が盛んに叫ばれ始めた。大学の推薦入試や就職試験の際にも「リーダーシップ」があるかどうかが重要視されてきている。アメリカでは以前からリーダーシップ教育が行われ、イギリスでも盛んだという。そこで日米英三カ国でのリーダーシップ教育の違いや共通点を調べ、そこから見える「リーダーとは何か」について取材した。

■円の中心にいるリーダー
  カリフォルニア大学バークレー校でY-PLANという教育を行っているCenter for Cities and Schoolsのディレクター. デボラ・マッコイさんと、コーディネーターのジェシー・スチュワートさん(28)にインタビューをした。Y-PLANとは、若者が地域の活性化プロジェクトに参加し、自分たちのアイディアを市長や企業に直接プレゼンテーションをするまでを行うプログラムだ。スチュワートさんは「ここでは、自分の意見やアイディアを表現する場が与えられるため、自分がリーダーとなってこの地域を変えてみようという自信をもつことができるようになる」と自信たっぷりに語った。リーダーになるための要素は「周りへの思いやりとリスクを取る勇気。リーダーは自分のことだけではなくグループ全体のことも考えなければいけないし、反対意見も聞いてグループをバランスよくまとめる能力が必要なの」と指導のコツを教えてくれた。なぜリーダーシップが重要視されているかを尋ねると、「アメリカではこれまで、高等教育を受けた裕福な人たちがリーダーになっていたが、グローバル化した今、金持ちか貧乏か、教育をうけたか受けてないかは関係なく、誰もがリーダーシップスキルを持つ必要がある時代になった」とデボラさんはいう。
このY-PLANを体験した日本人がいる。東北で被災した100人の高校生たちだ。彼らがまとめた昨年の報告書によると、参加者の一人は、「リーダーとは一番偉い人で三角形の頂点に立っている人ではなく、円の中心にいて、みんなの意見を一つにまとめてきれいな円を作りあげる人のことだ」と述べている。さらに「一番変わったことは、人前で話すことが全く怖くなくなり自分の意見を言えるようになった」という前向きな感想が多かった。

■グループプロジェクトの効果
ロンドンにあるリーダーシップ教育の団体Changemakersと、CEの姉妹団体であるHeadlinersの支局を訪ねた。Changemakersは1994年に教育学者やNGOによって設立された団体で、リーダーシップを通じて若者の潜在能力を引出し、周りにもっと強い影響を与えたいという精神と、リーダーに必要な要素を自身で見つけさせることを目指している。Changemakersの指導者の一人であるスラッジさん(26)によると、このプログラムを受けた後の若者は、自信、コミュニケーションスキル、モチベーション、それに大志が身に付くという。「日本では出る杭は打たれる」と話すと、スラッジさんは「リーダーになって支持を得るには、まずはみんなから認められ、みんなをサポートするためにリーダーがいるということを強く伝えなければいけない」と強調した。現在イギリスではこうした教育機関が多くあるため競争が激しいそうだ。イギリスでどのくらいリーダーシップが重要視されているか想像がつく。

Headlinersのロンドン局でリーダーに必要な条件を聞いたところ、どの記者も必ずあげたのが、自信、他人の意見を聞く、チームワークを大切にできるという三つの要素だった。記者の一人ガブリエラさん(17)は、若者でビジネスを立ちあげるというプログラムに参加しリーダーを務めたそうだ。彼女はこのプログラムを通して「十人十色のグループを一つにまとめて、みんなをゴールへ導くことに苦労したがこの経験によって、自立心が芽生え責任感を持つようになった」という。日本ではグループワークが少なくリーダーになることを恥ずかしがると話すと、イギリスの若者は意外な表情を見せた。グループプロジェクトはコミュニケーションスキルが身に付くし、他人から学ぶこともたくさんあるから日本ではもっと頻繁に行うべきだと指摘を受けた。

北アイルランド地方ベルファスト局のナオミさん(18)は「リーダーシップはプログラムを受けなくても育つ。自分の人生を自分で引っ張っている時点でもう身に付いている」と言う。ディアナさん(18)はもっと冷静な見方をした。「もしリーダーが休んだら残りのメンバーの中からまたリーダーシップを取れる人がいるようにするためには、みんなにリーダーシップが必要である。リーダーになることは特別なことではない」と。

リーダーとはトップで引っ張っていくという意味ではなく、みんなの中心になって様々な意見を聞きながら周りに認めてもらい、チームをまとめていく役割であると米英の同世代の若者たちが共通して語った。リーダーシップは若いころにリーダーを経験することで誰もが身に着くものなので、アメリカやイギリスではこのような教育団体が多く存在することが分かった。リーダーシップは特別なものではなく身近なものであることを若者が理解することが大事だ。アメリカやイギリスのような教育を取り入れれば日本にもっと多くのリーダーが誕生していくのではないだろうか。